お子さんの発達診断後、まず何をする?混乱を乗り越える最初の一歩
お子さんの発達について専門機関を受診し、診断を受けたばかりでいらっしゃるのですね。診断名を聞いて、頭が真っ白になってしまったり、「これからどうすれば良いのだろう」と強い不安を感じたりしているかもしれません。
膨大な情報の中で、何から始めたら良いか分からず、混乱している方もいらっしゃるかと思います。このサイトは、発達の診断を受けたお子さんを持つご家族が、適切な支援に繋がり、家庭での関わり方のヒントを得られるようにナビゲートすることを目的としています。
この記事では、診断直後にまず知っておいていただきたいこと、そして最初の一歩として何から始めれば良いのか、具体的なステップを分かりやすくお伝えします。この記事を読み終えた後、少しでも心が落ち着き、次への道筋が見える手助けとなれば幸いです。
発達の診断が意味すること
まず、お子さんの発達に関する診断は、お子さんの「特性(とくせい)」を理解するための手がかりであると捉えていただければと思います。「障害」という言葉に抵抗を感じたり、お子さんの将来を悲観的に捉えてしまったりすることもあるかもしれません。しかし、診断は、お子さんがどのようなことにつまずきやすく、どのような環境やサポートがあればより生きやすくなるかを知るためのものです。
診断があることで、お子さんの困りごとに対して、専門的な視点に基づいた適切な支援や配慮を受けやすくなります。これは、お子さんの成長を促し、能力を伸ばしていくための大切なステップなのです。診断は、お子さんの全てを決定するものではなく、お子さんの可能性を狭めるものでもありません。
なぜサポートが必要なのでしょうか
発達に特性のあるお子さんは、周囲の状況を理解すること、自分の気持ちを伝えること、集団の中で適切に振る舞うことなど、日常生活や社会生活を送る上で、定型発達(一般的な発達)のお子さんとは異なる難しさを抱えることがあります。
このような難しさに対して、お子さんの特性に合った方法でサポートを行うのが「療育(りょういく)」や「発達支援」です。療育や発達支援は、特定のスキルを教え込むだけでなく、お子さんが持っている力を引き出し、社会の中でより楽に、自分らしく生きていくための力を育むことを目指します。
療育や発達支援は、早期に始めることで、お子さんの成長や適応をより効果的に促せると言われています。ただし、ここで言う「早期」に絶対的な基準があるわけではありません。診断を受けた「今」が、まさに最初の一歩を踏み出す最良のタイミングなのです。焦る必要はありません。一歩ずつ、お子さんとご家族にとって最善の道を探していきましょう。
診断後、最初に行うべきこと
診断を受けて「何から始めれば良いのか分からない」という状況は、多くのご家族が経験することです。情報過多で混乱することなく、落ち着いて次へ進むために、まずは以下のステップを参考にしてみてください。
1. 診断結果を整理し、受け止める時間を持つ
診断を受けた直後は、医師から聞いた話が頭に入ってこなかったり、感情が大きく揺れ動いたりすることがあります。すぐに全ての情報を理解しようとせず、まずは診断名や医師からの説明を記した書類を落ち着いて見返してみてください。分からない言葉があれば、後で調べたり、専門家にもう一度尋ねたりすることができます。
大切なのは、診断がお子さんの「一部」を示すものであり、お子さんの個性や魅力が変わるわけではない、ということです。診断を受け入れるまでには時間がかかることもあります。ご自身の感情に寄り合う時間も大切にしてください。
2. 信頼できる情報収集を始める
インターネット上には様々な情報があふれています。中には不確かな情報や、不安をあおるような情報もあります。情報収集を始める際は、公的機関(厚生労働省、自治体のウェブサイトなど)、病院、信頼できる支援機関、専門家が執筆した書籍など、信頼性の高い情報源を選ぶことが重要です。
お子さんの診断名について基本的な知識を得たり、どのような支援の種類があるのか概要を把握したりすることから始めると良いでしょう。一度に多くの情報を得ようとせず、少しずつ、自分が理解できる範囲で進めるのが負担を減らすコツです。
3. 相談先を探し、連絡してみる
診断後、最初の一歩として最も重要で具体的な行動の一つが、専門の相談窓口に連絡することです。一人で抱え込まず、専門家のサポートを借りましょう。
主な相談先としては以下のような場所があります。
- お住まいの市区町村の窓口:
- 障害福祉課、子育て支援課、保健センターなどが相談窓口となっていることが多いです。自治体によって名称が異なります。
- ここでは、利用できる公的な支援制度やサービス(後述の「受給者証」など)について説明を受けたり、地域の支援機関の情報を得たりすることができます。
- 児童発達支援センター:
- 主に未就学のお子さんを対象とした、地域の中核的な療育支援機関です。
- 発達に関する相談に応じてくれる他、通所による療育を提供している場所もあります。
- かかりつけの病院や専門機関:
- 診断を受けた病院の相談窓口や、地域の精神保健福祉センターなども相談に乗ってくれる場合があります。
- 相談支援事業所:
- 障害福祉サービスを利用するための計画作成(サービス等利用計画)を支援する事業所ですが、制度やサービスに関する相談も受け付けてくれます。
まずは、お住まいの自治体のウェブサイトで相談窓口の情報を調べるか、診断を受けた医療機関に地域の相談先を尋ねてみるのがおすすめです。電話やメールで「診断を受けたばかりで、何から始めれば良いか分からない」と正直に伝えて相談してみましょう。
4. 公的な支援制度を確認する
発達支援に関するサービス(療育など)の多くは、「障害児通所支援(しょうがいじつうしょしえん)」という公的な制度に基づいて提供されます。このサービスを利用するためには、お住まいの市区町村から「通所受給者証(つうしょじゅきゅうしゃしょう)」の交付を受ける手続きが必要です。
受給者証を取得することで、サービスの利用にかかる費用の自己負担額が軽減されます。受給者証の申請方法や、どのようなサービスが対象になるのかは、先述の市区町村の窓口で詳しく説明を受けることができます。
診断直後は慌ただしいかもしれませんが、今後の支援利用のために、この受給者証の手続きについて情報収集を始めることをお勧めします。
療育や支援にはどんな種類がある?選び方のヒント
お子さんの発達をサポートする療育や支援には、様々な種類があります。診断後の相談を通じて、お子さんのニーズやご家族の状況に合った支援を選ぶことになります。ここでは、代表的なものを簡単にご紹介します。
- 児童発達支援(じどうはったつしえん):
- 主に未就学のお子さんが対象です。
- 日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与、集団生活への適応訓練などが行われます。
- 通所する施設には、専門的なプログラムを提供する事業所や、幼稚園・保育園のように日中を過ごす中で療育を行う場所など多様な形態があります。
- 放課後等デイサービス(ほうかごとうデイサービス):
- 主に小学生から高校生までのお子さんが対象です。
- 学校の授業終了後や長期休暇中に利用でき、生活能力向上のための訓練や、安心して過ごせる居場所の提供などが行われます。
- 医療機関でのリハビリテーション:
- 作業療法(OT)、言語聴覚療法(ST)、理学療法(PT)など、医師の診断に基づき、専門職による個別の治療や訓練を受ける場合があります。
- 民間の教室やサービス:
- 学習支援、ソーシャルスキルトレーニング(SST)、音楽療法など、様々な専門的なプログラムを提供する民間のサービスもあります。
どのサービスが利用できるか、そしてお子さんにとって何が最適かは、お子さんの年齢、発達の状況、困りごとの内容、ご家族の希望などによって異なります。相談窓口で情報提供を受けたり、いくつかの施設を見学したりして、お子さんに合った場所を見つけることが大切です。
家庭での関わり方も大切な支援です
専門機関での療育や支援も重要ですが、日常生活の大部分を過ごす家庭での関わり方も、お子さんの成長にとって非常に大切です。診断を受けたことで、「特別なことをしなければ」と気負いすぎてしまう必要はありません。
まずは、お子さんの「できること」や「良いところ」に目を向けることから始めてみましょう。診断名だけでなく、お子さん一人ひとりの得意なこと、好きなこと、興味のあることを理解することが、関わりの第一歩です。
- 分かりやすいコミュニケーション: お子さんへの指示は短く具体的に伝える、絵や写真などの視覚的な情報も活用するなど、お子さんが理解しやすい方法を工夫してみましょう。
- 安心できる環境づくり: 予測可能なスケジュールを作る、刺激の少ない落ち着ける場所を用意するなど、お子さんが安心して過ごせる環境を整えることも有効です。
- ポジティブな声かけ: できたことや頑張ったことに対して、具体的に褒めることで、お子さんの自己肯定感を育みます。
家庭での関わり方についても、相談機関や支援機関で具体的なアドバイスをもらうことができます。このサイトでも、家庭で実践できる関わり方について、今後様々な情報を提供していく予定です。
一人で抱え込まず、ゆっくりと進みましょう
お子さんの発達診断は、ご家族にとって大きな出来事です。不安や混乱を感じるのは自然なことですし、すぐに全てを理解し、完璧に対応しようとする必要はありません。
まずは、ここでご紹介したように、診断の意味を理解し、信頼できる相談先を見つけることから始めてみてください。自治体の窓口や専門機関の担当者は、きっとあなたの状況に寄り添い、次の一歩を丁寧に示してくれるはずです。
あなたは一人ではありません。多くのご家族が同じような経験を乗り越え、お子さんと共に歩んでいます。焦らず、ご自身のペースで、そしてお子さんのペースに合わせて、一歩ずつ進んでいきましょう。この情報が、その最初の一歩を踏み出すための一助となれば幸いです。