お子さんの発達診断を受けたら:増える情報や記録の整理・活かし方
お子さんの発達について診断を受けられたとのこと、本当にお疲れ様でございます。診断結果を受け止め、今後どのように進んでいけば良いのか、たくさんの情報の中で混乱されているかもしれません。この時期は、お子さんのこと、今後の手続き、療育や支援についてなど、これまでになかった多くの情報に触れることになります。
この記事では、発達診断を受けた後に増える情報をどのように整理し、記録していくか、そしてその情報を今後の支援にどのように活かせるのかについて、具体的な方法をお伝えします。情報整理は、今後の療育や支援をスムーズに進めるため、そして何より、お子さんの成長を丁寧に見ていく上で、きっと力になるはずです。
診断後に増える情報とその重要性
発達診断を受けた後、お子さんに関する情報は以前より増えていきます。例えば、以下のようなものがあります。
- 診断書や検査結果: 医療機関で発行される診断名や発達検査(WISC, KABC, 新版K式など)の結果報告書です。これらは、お子さんの発達特性を理解する上で最も基本的な情報となります。今後の支援の方向性を検討したり、行政や支援機関に申請したりする際に必要になる重要な書類です。
- 医師や専門家との面談記録: 医師や心理士、セラピストなどとの面談で聞いたアドバイスや、話し合った内容の記録です。口頭での情報は忘れやすいため、記録に残しておくことが大切です。
- 相談機関や行政とのやり取り: 保健センター、子育て支援センター、児童相談所などの相談窓口や、自治体の担当部署との電話や面談の記録です。各種制度の利用方法や手続きについて、重要な情報が含まれます。
- 療育・支援機関の情報: どんな機関があるのか、それぞれの特徴、見学や体験の際の印象、利用契約に関する書類などです。機関選びや利用中の振り返りに役立ちます。
- 受給者証などの公的な書類: 児童発達支援や放課後等デイサービスなどの障害福祉サービスを利用する際に必要となる「通所受給者証」などです。申請書類の控えや、認定されたサービス内容、期間などが記載されています。
- 家庭での日々の記録: お子さんの様子、得意なこと、苦手なこと、困りごと、できるようになったこと、試した関わり方とその結果などです。これは、お子さんへの理解を深め、支援者へ具体的な状況を伝える上で非常に役立つ情報です。
これらの情報は、今後の支援計画を立てる際や、複数の機関が連携する上で欠かせないものとなります。しかし、バラバラに管理していると、必要な時にすぐに見つけられなかったり、情報が古くなってしまったりすることがあります。
情報整理・記録の具体的なステップ
では、どのように情報を整理し、記録していけば良いのでしょうか。いくつかのステップと具体的な方法をご紹介します。
ステップ1:記録する目的を明確にする
なぜ記録するのか、主な目的を考えてみましょう。
- お子さんの発達特性や成長の過程を理解するため
- 医師や支援機関の担当者へ、お子さんの様子を正確に伝えるため
- 自治体の福祉サービスや学校での配慮を申請する際に、状況を説明するため
- 将来、お子さん自身が自分の歩みを振り返るため
- ご自身の気持ちを整理するため
目的がはっきりすると、どのような情報を、どの程度詳しく記録すれば良いかが見えてきます。
ステップ2:何を記録するかを決める
増えていく情報の種類ごとに、記録・保管すべき内容を決めます。
- 公的な書類や診断書、検査結果: これらは原本を大切に保管し、コピーを整理用として使うのがおすすめです。書類名、発行日、主な内容(診断名、IQなど)、有効期限などをまとめてリスト化しておくと管理しやすくなります。
- 面談や相談の記録: 日付、場所(誰とどこで話したか)、話し合った内容(重要なアドバイス、決定事項、次回までの課題など)を箇条書きなどで簡潔にまとめます。
- 家庭での日々の記録:
- お子さんの様子: 「いつ(日付・時間)、どこで、誰といる時に、どんな状況で、お子さんがどうしたか(具体的な行動や発言)、それに対してどう対応したか、その結果どうなったか」のように、できるだけ客観的に具体的に記録します。
- 得意なこと・興味のあること: どんな時に集中できるか、何をしている時が楽しそうかなど、ポジティブな側面も記録します。これはお子さんの強みを見つけ、支援に活かすために非常に重要です。
- 試したこと・工夫したこと: 家庭で試した声かけの方法、環境調整、取り組みなどがうまくいったかどうかの記録は、今後の関わり方を考える上で参考になります。
記録は完璧を目指す必要はありません。まずは、特に重要だと感じたことや、繰り返し見られる様子などに絞って記録を始めてみるのが良いでしょう。
ステップ3:どのように記録・整理するか方法を選ぶ
記録・整理する方法は、アナログなものからデジタルなものまで様々です。ご自身が続けやすい方法を選びましょう。
- ノートや手帳: 手軽に始められます。持ち歩いてすぐに書き込めるのがメリットです。時系列で記録するのに向いています。
- ファイルボックスやクリアファイル: 書類整理に適しています。項目別(診断書、受給者証、療育機関、学校・園など)に分けて保管できます。
- パソコンの文書ファイル(Word, Excelなど): 情報を体系的にまとめたり、後から編集・検索したりしやすい方法です。Excelなどで簡単なリストを作成するのも良いでしょう。
- スマートフォンやタブレットのメモアプリ・カレンダー機能: 日々の簡単な記録や、予約、期限などの管理に便利です。
- 写真や動画: お子さんの具体的な様子や、使っている教材などを記録するのに非常に有効です。記録の際に「いつの」「どういう状況の」写真・動画なのか説明を加えておくと、後で見返した時に分かりやすいです。
- 専用アプリやオンラインサービス: 発達に関する記録に特化したアプリなどもあります。機能が豊富なものもありますが、まずは使いやすさを重視して選ぶのが良いでしょう。
複数の方法を組み合わせるのも有効です。例えば、日々の記録は手軽なノートやスマホアプリで、重要な書類はファイルボックスで、面談記録はパソコンで管理するなどです。
整理・記録した情報を活用する
せっかく整理・記録した情報も、活用できなければ意味がありません。これらの情報をどのように活かせるか見ていきましょう。
- 支援者への情報提供: 医療機関や療育機関での面談時、家庭での具体的な様子を伝える際に記録を見せることで、状況を正確に、漏れなく伝えることができます。これにより、専門家はお子さんのことをより深く理解し、適切なアドバイスや支援計画を立てやすくなります。
- 手続きや申請の際の根拠: 診断書はもちろん、日々の記録から見えてくる具体的な困りごとや配慮が必要な点に関する情報は、受給者証の更新時や、学校・園での合理的配慮を求める際などに、状況を説明するための重要な根拠となり得ます。
- お子さんの成長の振り返り: 記録を時々見返すことで、以前はできなかったことができるようになったなど、お子さんの成長を改めて感じることができます。これは、子育てで悩んだり行き詰まったりした時に、親御さん自身の励みにもなります。
- ご自身の気持ちの整理: 日々の出来事や感じたことを書き出すことで、頭の中が整理され、抱えている不安や課題が明確になることがあります。また、後から記録を見返した時に、客観的に状況を捉えやすくなることもあります。
情報は「集めること」自体が目的ではなく、「活用すること」で価値が生まれます。整理・記録は、お子さんのより良い未来につながる一歩となるのです。
無理なく続けるためのヒント
情報整理や記録は、毎日の生活の中で負担にならない程度に行うことが大切です。
- 完璧を目指さない: 全てを詳細に記録しようとすると大変になります。まずは、「これだけは記録しておこう」という項目を決めて始めるのが良いでしょう。
- 短い時間で済ませる工夫: 面談後すぐにメモを取る、寝る前に5分だけ書き出すなど、隙間時間を活用しましょう。
- ツールを使い分ける: 用途や状況に合わせて、最も手軽なツールを選びましょう。
- 一人で抱え込まない: パートナーや家族と協力したり、記録ツールを共有したりするのも良い方法です。
- 記録しない日があってもOK: 記録が途切れてしまっても気にしないこと。また「今日から始めよう」と思えばいつでも再開できます。
まとめ:整理・記録は、お子さんとの歩みを大切にするツール
お子さんの発達診断は、子育てにおける新しいスタート地点です。診断後、増える情報に戸惑うこともあるかと思いますが、それらの情報を整理し、記録することは、お子さんの発達を理解し、適切な支援につなげるための大切なステップです。
ここでご紹介した方法が、皆様の情報整理の一助となれば幸いです。完璧でなくても大丈夫です。ご自身とお子さんのペースで、できることから始めてみてください。
この記録は、単なるデータではなく、お子さんがどのように世界を理解し、成長していくのかを綴る、かけがえのないストーリーです。そして、それは親御さんがお子さんと共に歩んだ証でもあります。焦らず、一歩ずつ、お子さんとの日々を大切に進んでいきましょう。私たちは、この「発達支援ナビゲーター」を通じて、皆様の旅を応援しています。