お子さんの自己肯定感を育むには?家庭でできる関わり方
診断を受け、お子さんの発達に特性があることが分かったとき、様々な情報に触れる中で、「できないこと」や「苦手なこと」に目が行きがちになるかもしれません。療育や支援機関の検討と同時に、家庭での関わり方についても考え始めることでしょう。
この記事では、お子さんの自己肯定感を育むことがなぜ大切なのか、そして、日々の家庭生活の中で自己肯定感を育むために、具体的にどのような関わり方ができるのかについてご紹介します。この情報が、お子さんとの関わり方を考える上で、少しでもお役に立てれば幸いです。
自己肯定感とは?なぜ発達特性のあるお子さんにとって大切なのでしょうか
自己肯定感とは、「ありのままの自分自身を肯定的に受け入れられる感覚」のことです。自分の良いところも苦手なところもひっくるめて、「自分は大切な存在だ」「自分にはできることがある」と感じられる心の状態と言えます。
発達に特性のあるお子さんの場合、周囲との違いを感じやすかったり、特定のスキル習得に時間がかかったりすることがあります。頑張ってもうまくいかない経験が積み重なることで、「どうせ自分はダメだ」と感じてしまい、自己肯定感が低くなってしまうことがあります。
しかし、自己肯定感は、新しいことに挑戦する意欲や、困難に立ち向かう粘り強さ、そして自分らしく生きていく上で非常に大切な心の基盤となります。自己肯定感が高いと、たとえ失敗してもそこから学び、次に繋げることができます。家庭は、お子さんが最も安心して過ごせる場所であり、自己肯定感を育む上で非常に重要な役割を担っています。
自己肯定感を育む家庭での関わり方の基本姿勢
お子さんの自己肯定感を育む上で、親御さんの関わり方で大切にしたい基本的な姿勢がいくつかあります。
- 無条件の愛情を伝える: 「〜ができたら好き」「〜ができないから嫌い」ではなく、「あなたがあなたであることそのものが大切で、大好きだよ」というメッセージを、言葉や態度で伝え続けてください。結果や能力に関わらず、存在そのものを肯定することが最も重要です。
- ありのままを受け入れる: お子さんの発達特性や、それによる言動を否定せず、「お子さんの個性なのだ」と理解し、受け入れる姿勢が大切です。もちろん、社会の中で折り合いをつけるためにサポートは必要ですが、根っこにある特性そのものを否定しないことが、お子さんの安心感に繋がります。
- 努力やプロセスを褒める: 結果が伴わなくても、挑戦したこと、努力した過程、諦めずに取り組んだ姿勢などを具体的に褒めてください。「最後まで座っていられたね」「難しいパズルだけど、考えていたね」のように、具体的な行動を言葉にすることが効果的です。
- 叱るときは行動を指摘する: 望ましくない行動があった場合も、お子さんの人格や存在そのものを否定する言葉(「あなたは本当にダメな子だ」「どうしていつもこうなの」など)は避け、「〜という行動は良くなかったよ」「〜すると危ないからやめようね」のように、問題のある行動そのものを具体的に指摘し、どうすれば良いのかを伝えてください。
家庭でできる!自己肯定感を育む具体的な関わり方
それでは、日々の生活の中で具体的にどのような関わり方ができるのでしょうか。いくつかの例をご紹介します。
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得意なことや好きなことを見つけ、伸ばすサポートをする: お子さんが何に興味を持ち、どんな時に目を輝かせているか、日頃から注意深く観察してみてください。絵を描くこと、電車を見ること、特定のキャラクターが好き、体を動かすのが得意など、どんな小さなことでも構いません。それらの活動を一緒に楽しんだり、関連する情報や機会を提供したりすることで、お子さんは「自分にはこれができる」「これが好きだ」という感覚を深め、自信に繋がります。
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スモールステップで成功体験を積ませる: お子さんにとって難しすぎる課題は、失敗体験に繋がりやすく、自信を失う原因になります。少し頑張れば達成できるような、小さく区切った目標(スモールステップ)を設定し、成功体験を積み重ねられるようにサポートします。「靴を揃える」「使ったおもちゃを箱に入れる」「服をたたむのを一つ手伝う」など、家庭での些細なことから始めることができます。達成できたら、「できたね!」と一緒に喜びを分かち合ってください。
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子ども自身に選択させる機会を作る: 自分で選び、決める経験は、「自分でコントロールできる」という感覚を育み、自己肯定感を高めます。「今日の服はどっちにする?」「おやつはどっちがいい?」など、お子さんが自分で判断して決められる機会を意識的に作ってみてください。選択肢を絞るなど、お子さんが混乱しないような配慮も大切です。
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具体的な肯定的な声かけをする: 抽象的な「えらいね」「すごいね」だけでなく、「〜ができたね」「〜しようと頑張っていたね」「〜なところがママ/パパは嬉しいな」など、具体的な行動や状態を指して褒めたり、肯定的な気持ちを伝えたりすることが効果的です。例えば、「言われたことをすぐに聞けてえらいね」ではなく、「靴をすぐに揃えてくれてありがとう、助かったよ」のように、具体的な行動と感謝の気持ちを伝える方が、お子さんには伝わりやすい場合があります。
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失敗や苦手なことへの向き合い方を伝える: 失敗は悪いことではなく、成長の機会であることを伝えます。「次はどうしたらうまくいくかな?」「難しかったけど、ここまでできたね、頑張ったね」のように、失敗から学び、再び挑戦する姿勢をサポートします。苦手なことについては、完璧を目指す必要はないこと、手助けを求めることは恥ずかしいことではないことなどを伝えてください。
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安心できる居場所としての家庭を作る: 家庭が、お子さんがそのままの自分でいられる、最も安心できる場所であることは、自己肯定感の土台となります。お子さんの話をじっくり聞く時間を作ったり、スキンシップを大切にしたり、一緒にリラックスできる時間を持ったりしてください。
親御さん自身の自己肯定感も大切に
お子さんの自己肯定感を育むためには、親御さん自身がご自身を大切にし、安心した気持ちでいることも重要です。お子さんの診断を受けて、様々な情報に触れる中で、ご自身を責めたり、不安になったりすることもあるかもしれません。
完璧な親である必要はありません。お子さんの良いところに目を向け、スモールステップで関わり方を試していくように、ご自身のことも大切にしてください。休息を取る、信頼できる人に話を聞いてもらう、専門機関に相談するなど、ご自身の心のケアも大切にされてください。親御さん自身が心穏やかでいられることが、お子さんにとって何よりの安心感となります。
まとめ
お子さんの自己肯定感を育むことは、発達支援において非常に大切な視点です。診断後の混乱や不安がある中で、お子さんの「できないこと」ではなく、「できること」「好きなこと」「得意なこと」に目を向け、それを伸ばしていく関わり方を意識してみましょう。
無条件の愛情を伝え、ありのままを受け入れ、努力やプロセスを認め、小さな成功体験を積み重ねられるようなサポートをする。これらは特別なことではなく、日々の暮らしの中で実践できることです。焦らず、できることから一つずつ試してみてください。
お子さんのペースを大切にしながら、一つずつ、お子さんの「自分っていいな」という気持ちを育んでいくサポートを続けていきましょう。この道は一人で歩むものではありません。必要な情報やサポートを得ながら、お子さんと共にゆっくりと進んでいけることを願っています。