発達診断を受けたお子さんのために:利用できる公的支援制度ガイド
お子さんの発達について診断を受けられた後、今後の療育や支援のことと並んで、経済的なことに対する不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。通院や療育にかかる費用、将来への備えなど、経済的な負担についてどのように考え、どのような支援があるのか、情報が整理できずに戸惑うこともあるでしょう。
このページでは、発達に関する診断を受けたお子さんやそのご家族が利用できる可能性のある公的な支援制度について、その種類や概要を分かりやすくお伝えします。これらの制度を知り、適切に活用することで、経済的な負担を軽減し、お子さんの成長を支えるためのサポート体制を整える一助となることを願っています。
発達特性に伴う経済的な負担について
発達特性があるお子さんの子育てにおいては、医療機関での診察や検査、療育施設での支援など、様々なサポートを利用することがあります。これらのサービス利用には費用がかかる場合があり、家計への負担となることがあります。また、日常生活における特定の困りごとに対処するための工夫や、将来的な自立に向けた準備など、経済的な面で考慮すべき点が出てくることもあります。
このような経済的な負担を一人だけで抱え込む必要はありません。国や自治体には、障害のある方やそのご家族を支援するための様々な制度が設けられています。これらの制度は、経済的な負担を軽減し、必要な支援を受けやすくすることを目的にしています。
利用できる可能性のある公的支援制度の種類
発達に関する診断名や、診断を受けた時点での年齢、特性の程度などによって、利用できる支援制度は異なります。ここでは、いくつかの代表的な制度についてご紹介します。
医療費に関する支援
医療機関での通院や検査にかかる費用を軽減する制度があります。
- 自立支援医療(精神通院医療) 精神疾患のために医療機関に継続して通院する必要がある方が、その医療費の自己負担額を軽減するための制度です。通常3割負担の医療費が原則1割負担になります(所得に応じて自己負担額の上限が設定されます)。発達障害もこの制度の対象となる場合があります。診断名や医師の意見書などに基づいて申請を行います。 (※精神疾患:心の病気全般を指し、発達障害も含まれることがあります。)
手当・年金に関する支援
お子さんの養育や生活を支援するための手当や、将来のための年金制度があります。
- 特別児童扶養手当 精神又は身体に一定以上の障害(政令で定める程度)がある20歳未満のお子さんを家庭で養育している父母または養育者に支給される手当です。お子さんの障害の程度や養育者の所得によって支給の可否や金額が決まります。
- 障害児福祉手当 日常生活において常時介護が必要な程度(政令で定める程度)の重度障害がある20歳未満のお子さんに支給される手当です。この手当も所得制限があります。
- 将来的な障害年金 20歳になった時点で一定以上の障害の状態にある場合などに支給される年金です。現在の診断や支援が、将来のこのような制度利用につながる可能性もありますが、詳細は複雑なため、現時点では「このような制度がある」ということを知っておく程度で良いでしょう。
療育・福祉サービスに関する支援
児童発達支援や放課後等デイサービスといった障害児通所支援などの福祉サービス利用に関する支援です。
- 障害児通所支援の無償化 3歳から5歳までのお子さん(満3歳になって初めての4月1日から小学校に入学するまで)は、所得に関わらず児童発達支援などの障害児通所支援が無償で利用できます。 また、小学校に入学後から高校を卒業するまでのお子さん(6歳から18歳まで)が利用する放課後等デイサービスなども、所得に関わらず無償化の対象となる場合があります。
- 高額障害福祉サービス費 ひと月に利用した障害福祉サービス(障害児通所支援を含む)の利用者負担額の合計が、世帯の所得に応じて定められた上限額を超えた場合、申請によりその超えた分が支給される制度です。
その他の支援
上記以外にも、所得税や住民税の障害者控除、公共料金の割引(障害者手帳の取得が必要な場合が多い)、各種助成制度など、様々な経済的支援や優遇措置が存在する場合があります。
支援制度の情報収集と相談先
これらの公的な支援制度は多岐にわたり、制度の対象基準や申請方法は、お子さんの状況や診断名、お住まいの地域によって異なる場合があります。インターネット上の情報だけでなく、信頼できる窓口で確認することが非常に重要です。
情報収集や相談の第一歩としては、お住まいの市区町村役場にある障害福祉担当課や、発達に関する専門部署の窓口が最も一般的です。
- 市区町村の障害福祉担当課 各種手当の申請受付や、障害福祉サービスの利用に関する相談、制度全般に関する情報提供を行っています。
- 保健センターや子育て世代包括支援センター 地域の子育てや発達に関する相談窓口として、様々な情報を提供しています。
- 相談支援事業所 障害福祉サービスの利用計画作成などを通じて、様々な制度に関する情報提供や申請のサポートを行っています。
- 児童相談所 18歳未満のお子さんに関する様々な相談に応じており、適切な支援制度やサービスについて情報提供を行います。
これらの窓口では、お子さんの具体的な状況を伝え、どのような支援制度があるか、どのように申請すれば良いかを相談することができます。一人で悩まず、専門の窓口に問い合わせてみることをお勧めします。
まとめ:制度を知り、安心して次の一歩を
お子さんの発達に関する診断を受けた後、経済的なことを含め、様々な不安を感じるのは自然なことです。しかし、国や自治体には、経済的な負担を軽減し、必要な支援を受けやすくするための公的な制度が整備されています。
ご紹介した制度はあくまで一般的なものであり、詳細や利用可否はお子さんの状況やお住まいの地域によって異なります。まずは、お住まいの市区町村の窓口などに相談し、利用できる制度について具体的な情報を得ることが大切です。
経済的な不安が少しでも和らぎ、お子さんの成長を穏やかな気持ちで見守り、必要なサポート体制を整えていくための一歩となることを願っています。焦らず、一つずつ、できることから進めていきましょう。