療育・支援機関との連携をスムーズにする連絡帳の書き方・活用法
お子さんが発達支援や療育を受け始める際、支援機関との間で連絡帳を使ったやり取りが始まります。日々の様子を伝えたり、質問したり、受け取った情報を確認したりと、連絡帳はご家庭と支援機関をつなぐ大切なツールです。
しかし、「何を書けば良いのだろう」「うまく伝えられるか心配」と戸惑う方もいらっしゃるかもしれません。この情報が、連絡帳を通じた連携をスムーズにし、お子さんの成長支援に役立てるための一助となれば幸いです。
連絡帳がなぜ重要なのか
連絡帳は、ご家庭での様子と支援機関での様子を共有するための基本的なコミュニケーションツールです。専門家はお子さんの発達特性やその日の状態を踏まえて支援を行いますが、それは支援機関での限られた時間の中での姿です。
ご家庭でのお子さんの様子を知ることで、専門家はお子さんの全体像をより深く理解できます。また、支援機関での取り組みや気づきをご家庭に伝えることで、日々の生活の中での関わり方のヒントになったり、ご家庭での困りごとの解消につながったりすることもあります。
連絡帳は、単なる「報告書」ではなく、お子さんの成長を一緒に見守り、より効果的な支援を共に考えていくための「双方向のコミュニケーションツール」と捉えることが大切です。
連絡帳に書くと良いこと
連絡帳に書く内容は、特に決まりがない場合が多く、何を書くか迷うかもしれません。以下に、書くと役立つ一般的な項目と、それぞれのポイントをご紹介します。
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ご家庭での様子:
- その日の体調(睡眠時間、食欲など)
- 気分や機嫌
- 午前中の活動や出来事(支援機関に通う前に過ごした時間)
- 家での関わりで気になったこと、困ったこと(例: 特定のことに強いこだわりを見せた、いつもと違う遊び方をしていたなど)
- 家での関わりで「できたこと」「頑張ったこと」(例: 一人で着替えようとしていた、苦手な食べ物を一口食べられたなど)
- お子さんが特に興味を示したこと、熱中していたこと
- 支援機関に伝えたい出来事やエピソード
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専門家に聞きたいこと、相談したいこと:
- 支援機関での様子で気になったこと(例: 「今日はお友達とどう過ごしていましたか」など)
- 家庭での困りごとに対する具体的なアドバイスが欲しいこと(例: 「〇〇のとき、どのように声かけをすれば良いですか」など)
- 支援機関での取り組みを家庭でも試したい場合の具体的な方法
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その他:
- 遅刻や欠席の連絡
- 持ち物に関する連絡
- アレルギーや服薬に関する情報
毎日全ての項目について詳しく書く必要はありません。特に伝えたいことや、専門家と共有したいエピソード、質問したいことなど、その日の状況に合わせて柔軟に記載することが大切です。
伝わりやすい書き方のヒント
せっかく書いた連絡帳も、情報がうまく伝わらないともどかしい思いをすることもあります。専門家に伝わりやすくするための書き方の工夫をいくつかご紹介します。
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事実と解釈を分けて書く: 観察した「事実」と、それに対する自分の「解釈」や「感情」を区別して書くように心がけます。 (例) △「今日はとても落ち着きがありませんでした。」(解釈) 〇「食事中に席を立つことが3回ありました。また、おもちゃを床に叩きつけることが2回ありました。」(事実) 事実に加えて、「何か嫌なことがあったのかもしれません」「疲れていたように見えました」などの解釈や推測を添えるのは構いませんが、まずは具体的な事実を伝えることが重要です。
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具体的に描写する: 「少し」「たくさん」「あまり」といった曖昧な表現だけでなく、具体的な行動や状況を記述します。 (例) △「食事に時間がかかりました。」 〇「朝食に40分かかりました。特に野菜に手をつけませんでした。」 「お友達と遊べませんでした。」 〇「公園でブランコに乗っている〇〇君のそばに行きましたが、声をかけられず、すぐに離れて砂場で一人で遊び始めました。」
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簡潔に、要点をまとめて書く: 長文になりすぎると、読む側も大変になってしまいます。伝えたいことの要点を整理し、簡潔にまとめます。箇条書きなども活用すると分かりやすくなります。
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ポジティブな視点も加える: 困りごとや気になったことだけでなく、「こんなことができるようになりました」「こんなに頑張りました」といったお子さんの良い面や成長も積極的に伝えます。これは、お子さんの全体像を把握してもらうためにも、専門家とのポジティブな関係を築くためにも有効です。
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必要に応じて写真を活用する: 言葉で説明しにくいこと(例: 作った作品、具体的な困りごとの状況など)は、写真を添えるとより伝わりやすくなることがあります。
受け取った連絡帳の活用法
支援機関から受け取った連絡帳にも、お子さんの支援に関する大切な情報が含まれています。内容をしっかり確認し、ご家庭での関わりに活かしましょう。
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支援機関での様子を共有する: 「今日〇〇先生とこんなことをしたんだってね」「これを頑張ったんだね」など、連絡帳に書かれていた内容についてお子さんと話したり、家族で共有したりします。これは、お子さんにとって支援機関が安心できる場所だと感じることにつながります。
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家庭での関わりに反映させる: 支援機関での取り組みや専門家からのアドバイスを参考に、ご家庭での関わり方を調整してみます。 (例: 支援機関で使っている声かけの方法を試してみる、連絡帳で助言されたポイントを意識してみるなど)
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記録として活用する: 連絡帳は、お子さんの成長の記録、支援の記録として後から見返すことができます。過去の様子と比較することで、成長やつまづきのパターンに気づくこともあります。
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次の連絡帳や面談での質問・相談につなげる: 連絡帳の内容でさらに詳しく聞きたいことや、疑問に思ったことは、次の連絡帳に書いたり、面談の機会に質問したりします。
専門家との信頼関係を築くために
連絡帳を通じた丁寧なコミュニケーションは、ご家庭と支援機関との信頼関係を築く上で非常に重要です。専門家は、ご家庭からの情報を真摯に受け止め、支援に活かそうと努めています。
もし、「書いたことが伝わっていないのでは」「うまく連携が取れていないのでは」と感じることがあれば、連絡帳だけでなく、必要に応じて電話や直接会って話す機会を設けることも検討しましょう。遠慮せずに、ご自身の感じていることや希望を伝えることが、より良い連携につながります。
連絡帳は、お子さんの成長をサポートするための大切なパートナーシップを築く第一歩です。
まとめ
療育や発達支援機関との連絡帳は、ご家庭とお子さんの支援チームを結ぶ架け橋です。日々のちょっとした情報を共有することが、専門家がお子さんへの理解を深め、より適切な支援を計画する上で非常に役立ちます。
何を書けば良いか迷う時は、お子さんの体調や機嫌、家での具体的なエピソード、そして専門家に聞きたいことを意識してみてください。事実を具体的に、簡潔に書くことで、情報はより伝わりやすくなります。
受け取った連絡帳は、お子さんとの会話のきっかけにしたり、家庭での関わり方のヒントにしたりと、積極的に活用しましょう。連絡帳を通じて、ご家庭と支援機関がより良い連携を築き、共にお子さんの成長をサポートしていくことが大切です。
完璧な連絡帳を目指す必要はありません。無理のない範囲で、正直に、そして誠実に日々の様子を共有していくことが、信頼関係を育むことにつながります。連絡帳をツールとして、お子さんにとって最善の支援環境を一緒に作っていきましょう。