療育の効果、どう判断する?期待通りでない場合の考え方
お子さんの発達に合わせた療育や支援を受け始めたものの、「期待していたほどの効果を感じられない」「このままで大丈夫だろうか」と不安に感じることがあるかもしれません。診断を受けたばかりの時と同様に、また新たな迷いや混乱が生じることもあるでしょう。
この記事では、療育や支援の効果をどのように考えれば良いのか、もし期待通りでないと感じた場合にどのように見直しを進めれば良いのかについて、分かりやすくご説明します。
療育の効果とは、どう考えれば良いのでしょうか
まず、療育や支援の効果は、すぐに目に見える形で現れるものばかりではないということをご理解いただけたらと思います。お子さんの成長や発達には個人差があり、支援の効果も様々です。
- 長期的な視点が必要な場合が多い: 療育は、特定のスキルを短期間で習得させることだけを目的としているわけではありません。コミュニケーション能力の向上、社会性の育み、集団への適応、自己肯定感の醸成など、お子さんの将来を見据えた長期的な目標に基づいていることがほとんどです。そのため、効果を実感するまでに時間がかかることがあります。
- 「効果」の捉え方: 「効果」と聞くと、「〜ができるようになった」という分かりやすい変化を想像しやすいかもしれません。もちろんそれも大切な効果ですが、「苦手な場面で落ち着いていられる時間が増えた」「以前より楽しそうに取り組むようになった」「関わり方のヒントが得られて家庭での声かけが変わった」といった、行動や気持ちの変化、周囲の対応の変化なども重要な効果と言えます。
- 目標との関連: 療育や支援は、お子さん一人ひとりの特性やニーズに合わせて目標を設定し、それに沿って行われます。設定された目標に対して、どれくらい進捗が見られるか、という視点で効果を捉えることが基本となります。
効果が期待通りでないと感じる理由にはどのようなものがあるでしょうか
療育や支援を受けていても、期待していたような効果を感じられない場合、いくつかの理由が考えられます。
- 目標設定のズレ: 最初にお子さんの状態に合わせて設定した目標が、現状やお子さんの本来のニーズと少しずれている可能性があります。
- アプローチ方法のズレ: お子さんの特性に合ったアプローチが十分になされていない、あるいは他の方法がより効果的である可能性があります。
- ご家庭での関わりとの連携: 療育で取り組んでいる内容と、ご家庭での日常の関わり方が十分に連携できていない場合、効果が限定的になることがあります。
- お子さんの状態や発達段階の変化: お子さんの成長に伴ってニーズが変化したり、特定の時期に一時的に停滞が見られたりすることもあります。
- 療育環境との相性: 療育を提供する場所(療育機関)の雰囲気や、担当の先生との相性なども、お子さんの取り組みやすさに影響することがあります。
- 効果を実感しにくい変化: 目に見えにくい内面的な変化(例えば、不安の軽減や意欲の向上など)が起きているものの、周囲が気づきにくい場合もあります。
期待通りでないと感じた時にできること・考えること
不安を感じたまま抱え込まず、次のようなステップで状況を整理し、見直しを検討することが大切です。
1. まずは担当の先生やスタッフに相談する
お子さんの療育や支援の状況を最もよく知っているのは、担当してくださっている先生やスタッフの方々です。不安に思っていること、期待していること、家庭での様子などを率直に伝え、相談してみましょう。
- 相談のポイント:
- 具体的にどのような場面で効果を感じにくいのかを伝える(例:「特定の課題になかなか取り組もうとしない」「家での困りごとが軽減されない」など)。
- 療育での具体的な取り組み内容や、お子さんの様子の詳細について説明を求める。
- 設定されている目標について、改めて説明を受け、現状との擦り合わせを行う。
- 家庭でできることについて具体的なアドバイスを求める。
- 今後の見通しや、何か変更を検討する必要があるかについて意見を交換する。
専門家は、家庭では気づきにくいお子さんの小さな変化や、療育の中での様子を捉えていることがあります。また、療育の目標やアプローチについて、改めて専門的な視点から説明を受けることで、安心できたり、新たな気づきが得られたりすることがあります。
2. 療育の目標や計画を見直す
担当者との話し合いを通じて、現在設定されている目標が今の状況に合っているか、あるいは目標達成までのステップやアプローチに調整が必要かを検討します。
- 計画の見直し: 療育は、通常、一定期間ごとに目標や計画(個別支援計画などと呼ばれるもの)を見直す機会があります。もし不安を感じている場合は、その時期を待たずに見直しを相談することも可能です。お子さんの成長や変化に合わせて、目標をより具体的にしたり、優先順位を変えたりすることがあります。
3. ご家庭での関わり方を見直す
療育や支援の効果を最大限に引き出すためには、ご家庭での連携が非常に重要です。療育で学んだお子さんへの接し方や、療育の内容と関連する活動を日常生活の中に取り入れることで、より効果が期待できます。
- 連携のヒント:
- 療育での様子やポイントを定期的に担当者から聞く。
- 家庭で取り組んでうまくいったこと、うまくいかなかったことを担当者に伝え、アドバイスをもらう。
- 特定の困りごとについて、療育と家庭で共通した対応方法を検討する。
4. 他の専門家や機関に相談する
担当者との話し合いを重ねても状況が改善しない、あるいは別の視点からの意見を聞きたいと感じる場合は、他の専門家や相談機関に相談することも選択肢の一つです。
- 相談先例:
- お子さんが利用している以外の療育機関の相談窓口
- 自治体の発達に関する相談窓口(子育て支援センター、児童相談所、発達障害者支援センターなど)
- かかりつけの医師や臨床心理士などの専門家
- ペアレントメンター(発達に特性のある子を育てた経験を持つ親)
複数の視点から意見を聞くことで、現状を多角的に理解し、お子さんにとって最適な次のステップを見つけるヒントが得られることがあります(これをセカンドオピニオンと呼ぶこともあります)。
5. お子さんの小さな変化に目を向ける
大きな変化が見られないと感じていても、よく観察すると、以前はできなかったことが少しずつできるようになった、特定の場面で以前より落ち着いていられるようになった、といった小さな変化に気づくことがあります。
- 記録をつけてみる: 毎日の生活の中で気づいたお子さんの言動、療育での様子などを簡単に記録しておくことは、変化を客観的に捉える助けになります。写真や動画で記録することも有効です。
- ポジティブな視点を持つ: 困難なことだけでなく、お子さんが楽しそうにしている時、得意なことをしている時など、ポジティブな側面に意識的に目を向けることも大切です。
焦らず、お子さんのペースに合わせて
療育や支援の効果は、お子さんの成長と同じように、ゆっくりと、時には後戻りしながら現れるものです。すぐに目に見える変化がないからといって、焦る必要はありません。
最も大切なのは、お子さんが安心して、そして楽しんで取り組める環境を整えることです。不安な気持ちは一人で抱え込まず、専門家や信頼できる人に相談してください。
この記事が、療育や支援の効果について考える上での一助となり、お子さんとのより良い未来への一歩を踏み出すためのお役に立てれば幸いです。