診断後に頼れる専門家:医師、心理士、ST…それぞれの役割と相談のポイント
お子さんの発達診断を受けたばかりの今、様々な情報があふれていて、誰に相談すれば良いのか、どんな専門家がいるのか、分かりにくく感じていらっしゃるかもしれません。診断の結果をどう受け止め、これからどのように子どもをサポートしていくか、不安な気持ちを抱えている方もいるかと思います。
この段階で大切なのは、一人で全てを抱え込まず、専門家の力を借りることです。お子さんの発達支援は、様々な専門家がそれぞれの視点から関わり、チームとして支えていくことが一般的です。この記事では、診断後にあなたが関わる可能性のある主な専門家の役割と、それぞれの専門家に効果的に相談するためのポイントについてお伝えします。この記事を通して、次に誰に頼れば良いのか、その糸口を見つけていただければ幸いです。
なぜ様々な専門家の力が必要なのでしょうか
お子さんの発達特性は、一人ひとり異なります。得意なこと、苦手なこと、興味の対象、周囲との関わり方など、様々な側面があります。これらの特性は、言葉の発達、体の使い方、物事の捉え方、社会性など、多岐にわたる領域に関わってきます。
そのため、特定の専門家だけでなく、多様な視点を持つ専門家が連携することで、お子さんの全体像をより深く理解し、それぞれの特性に応じたきめ細やかなサポートが可能になります。例えば、診断を行う医師、心理的な側面を評価する心理士、言葉やコミュニケーションをサポートする言語聴覚士、体の使い方や感覚をサポートする作業療法士など、それぞれが異なる専門性を持っています。これらの専門家が情報を共有し、協力することで、より効果的な支援計画を立て、実行することができるのです。
診断後に関わる可能性のある主な専門家とその役割
お子さんの発達支援に関わる専門家は多岐にわたりますが、診断後にあなたが関わる可能性のある主な専門家について、それぞれの役割を簡単にご説明します。
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医師(小児科医、児童精神科医、発達小児科医など)
- お子さんの発達に関する医学的な診断を行います。
- 医学的な視点から、発達特性の背景にある可能性のある要因について説明してくれます。
- 必要に応じて、薬物療法に関する相談や処方を行います。
- 他の専門機関やサービスへの情報提供書(紹介状など)を作成します。
- 定期的な診察を通じて、お子さんの全体的な成長や健康状態を把握し、長期的な見通しについて助言をしてくれます。
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心理士・臨床心理士・公認心理師
- 発達検査(心理検査)を実施し、お子さんの認知特性(物事の捉え方、理解の仕方、思考パターンなど)や得意・苦手な部分を客観的に評価します。
- お子さんの行動観察を行い、その背景にある心理的な側面を分析します。
- お子さんや保護者へのカウンセリングを通じて、心理的な不安や悩みへのサポートを行います。
- お子さんへの直接的な心理療法(プレイセラピーなど)や、保護者へのペアレントトレーニングを行うこともあります。
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言語聴覚士(ST)
- 言葉の発達、発音、コミュニケーション(話し方、聞き方、非言語コミュニケーションなど)に関する評価と訓練を行います。
- 言葉による指示の理解が難しい場合や、自分の気持ちや要求を言葉で伝えるのが苦手な場合など、コミュニケーションに関する様々な課題にアプローチします。
- 食事や嚥下(飲み込み)に関する機能の評価や訓練を行うこともあります。
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作業療法士(OT)
- 体の使い方(手先の巧緻性、姿勢の保持など)、感覚(触覚、視覚、聴覚、固有受容覚、前庭覚など)、日常生活動作(着替え、食事、排泄など)に関する評価と支援を行います。
- 特定の感覚に過敏さや鈍感さがある場合(感覚過敏、感覚鈍麻など)の調整方法や、運動が不器用な場合、集団行動についていくのが難しい場合などに関わります。
- 遊びを通じた体の使い方や感覚の統合を促すアプローチを行います。
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理学療法士(PT)
- 体の基本的な運動機能(歩行、バランス、寝返り、座るなど)に関する評価と訓練を行います。
- 姿勢の歪みや体の使い方に大きなつまずきがある場合に関わることがあります。
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相談支援専門員・児童発達支援管理責任者
- 自治体や支援機関に所属し、お子さんとご家族のニーズを聞き取り、総合的な支援計画(サービス等利用計画など)の作成をサポートします。
- 様々な福祉サービスや医療、教育機関との連絡調整を行います。
- チーム全体の連携の中心となり、サービスが適切に提供されているかを確認します。
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保育士・幼稚園教諭・学校教員
- お子さんの日々の集団生活での様子を最もよく知っています。
- 専門家や保護者と連携し、園や学校生活での困りごとへの対応を共に考え、実践します。
- 専門家からの助言を参考に、集団の中での関わり方や学習への配慮を行います。
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保健師
- 乳幼児健診などを通じて、お子さんの発達に関する相談に初期の段階から乗ってくれます。
- 地域の様々な子育て支援情報や、専門機関に関する情報を提供してくれます。
これらの専門家が、お子さんの年齢や特性、状況に応じて、それぞれの専門性を活かしてサポートを行います。全員に一度に関わるわけではなく、お子さんの成長や課題に合わせて、関わる専門家は変わっていくことが一般的です。
専門家との連携をスムーズにするために
様々な専門家が関わる中で、あなたがチームの中心となります。それぞれの専門家から得た情報や助言を整理し、必要に応じて他の専門家や園・学校と共有することで、より一貫性のある、お子さんに合った支援が進められます。
専門家との面談や相談の際に、あなたが準備し、伝えていただきたい大切なポイントがいくつかあります。
- 相談したいこと、聞きたいことをメモする: 面談の時間は限られています。事前に、今一番困っていること、聞きたいと思っていることを具体的に書き出しておくと、限られた時間を有効に使えます。
- 具体的なエピソードを伝える: 「〜ができません」「〜で困っています」だけでなく、「〇〇の場面で、△△という時に、□□という行動をとります。その結果、こうなります」のように、具体的な状況や行動、その前後の出来事を詳しく伝えると、専門家はお子さんの状況をより正確に理解しやすくなります。家庭での様子、園や学校での様子など、複数の場面について伝えると良いでしょう。
- 家庭での困りごとや工夫を共有する: 日常生活であなたが感じている困りごとや、それに対して家庭で試している工夫(うまくいったこと、いかなかったこと)を伝えてください。専門家は、あなたの困りごとに寄り添いながら、家庭で実践可能な具体的なアドバイスをしてくれます。
- 専門家の使う言葉で分からないことは質問する: 専門用語や、言われたことの意味がよく分からない場合は、遠慮なく質問してください。「これは具体的にどういうことですか?」「家ではどのようにすれば良いですか?」など、あなたが理解できるまで、繰り返し質問することが大切です。
- 面談で話した内容や助言を記録する: 面談で話したこと、専門家から受けた助言、次にやることなどをメモしておくと、後で見返したり、他の専門家と情報共有したりする際に役立ちます。ノートやスマートフォンのメモ機能などを活用してみてください。
- 療育や支援の目標を共有する: あなたが考えるお子さんの成長の目標や、将来的にどうなってほしいかといった願いを共有してください。専門家は、あなたの願いも踏まえながら、専門的な視点から実現可能な目標設定や支援計画を提案してくれます。
家庭での実践が支援効果を高めます
専門家から受けた助言や、療育・支援機関で取り組んでいる内容を、可能な範囲で家庭でも実践してみてください。例えば、言葉の専門家から教わった声かけの工夫を試してみる、作業療法の先生から教わった体の動かし方を取り入れてみる、などです。
家庭での実践は、お子さんが学んだことを日常生活の中で繰り返し練習する機会となり、支援の効果を高めることにつながります。全てを完璧にこなす必要はありません。無理のない範囲で、お子さんとの関わりの中で楽しみながら取り組む姿勢が大切です。あなたが「これも試してみようかな」と感じたことから、少しずつ始めてみてください。
まとめ:一人で抱え込まず、専門家と共に歩みましょう
お子さんの発達診断を受けた後、これから始まる発達支援の道のりには、様々な専門家が関わってくれます。医師、心理士、言語聴覚士、作業療法士、相談支援専門員、そして園や学校の先生方など、それぞれが専門的な視点からお子さんとあなたをサポートしてくれる存在です。
一人で全てを抱え込まず、「こういう時は誰に相談できるのだろうか」「この専門家はどんなことをしてくれるのだろうか」と知っておくことは、あなたが安心して支援を進めていく上で大きな力になります。今回の記事でご紹介した専門家の役割や相談のポイントが、その一助となれば幸いです。
焦る必要はありません。お子さんのペースで、あなたのペースで、信頼できる専門家と共に、一歩ずつ歩みを進めていきましょう。あなたは一人ではありません。