発達診断を学校や園に伝えるか迷ったら?連携で大切なこと
お子さんの発達について専門機関から診断を受けられたこと、お気持ちお察しいたします。診断を受けたことで、今後の方向性が見えてくる一方で、「学校や園に伝えた方が良いのだろうか」「伝えたらどうなるのだろうか」といった新たな疑問や不安をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
この段階で、学校や園との連携について考え始めることは、お子さんが日中の多くの時間を過ごす環境でより適切に過ごせるようにするために、非常に大切です。この記事では、発達診断について学校や園へ伝えることの意義や、具体的な伝え方、そしてその後の連携について、分かりやすくお伝えします。
なぜ学校や園との連携が大切なのでしょうか
学校や園は、お子さんが集団生活を送り、学びや成長を経験する大切な場所です。発達に関する診断や特性について学校や園と情報を共有し、連携することで、以下のようなメリットが期待できます。
- お子さんへの理解が深まる: 学校や園の先生方がお子さんの特性を理解することで、表面的な行動だけでなく、その背景にある理由を考慮した関わり方が可能になります。
- 適切なサポートや配慮を受けやすくなる: お子さんの特性に合わせた環境設定や声かけ、活動内容の調整など、きめ細やかな配慮(合理的配慮と呼ばれることもあります。お子さんが学校生活を送る上で生じる困難を取り除くための配慮のことです)を受けやすくなります。
- 家庭と学校・園で一貫した関わりができる: ご家庭での関わり方の工夫や、専門機関での療育内容などを学校や園と共有することで、お子さんへの対応に一貫性が生まれ、お子さん自身も安心して過ごせるようになります。
- 早期の課題発見と対応につながる: 日常的なお子さんの様子について、学校や園とご家庭で情報交換をすることで、新たな課題に早く気づき、対応策を共に考えることができます。
もちろん、学校や園に伝えることには不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、多くの学校や園は、全ての子どもたちが安心して学べる環境づくりに努めており、保護者からの相談を歓迎しています。
いつ、誰に、何を伝えるのが良いのでしょうか
診断を受けたことを学校や園に伝えるタイミング、伝える相手、伝える内容は、ご家庭の考え方やお子さんの状況、学校や園の方針によって異なりますが、一般的な考え方をお伝えします。
いつ伝えるか
診断後、ご家庭である程度気持ちの整理がつき、学校や園と情報を共有する準備ができた段階が良いでしょう。年度初めなど、先生方がお子さんの情報を整理しやすい時期も一つの目安ですが、何かお子さんに関して気になる様子が見られた時など、必要に応じて伝えることも可能です。すぐに全てを伝える必要はありません。
誰に伝えるか
まずは担任の先生に相談するのが一般的です。加えて、学校であれば特別支援教育コーディネーター(学校内で特別な支援に関する相談や調整を行う先生のこと)、園であれば園長先生や主任先生など、中心となって対応してくださる方に伝えると、より情報が共有されやすくなります。
何を伝えるか
診断名そのものよりも、お子さんの具体的な特性や困りごと、そして得意なことや好きなことを具体的に伝えることが重要です。
- 具体的な特性・困りごと:
- 「大きな音が苦手なようです」
- 「初めての場所や活動に慣れるのに時間がかかります」
- 「集団での指示を聞き逃してしまうことがあります」
- 「特定の物事に強いこだわりがあります」
- 「気持ちを言葉で表現するのが少し苦手なようです」 このような、具体的な行動や困り事の様子を伝えると、先生方が日々の関わりの中でヒントを得やすくなります。
- 得意なこと・好きなこと:
- 「絵を描くことが大好きで、集中して取り組めます」
- 「電車や昆虫の名前をたくさん知っています」
- 「体を動かす遊びが得意です」 お子さんの良い面や強みを伝えることで、先生はお子さんの自己肯定感を育むような声かけや、得意なことを活かせる機会を提供しやすくなります。
- 家庭での関わり方の工夫:
- 「新しいことを始める前に、写真や絵カードで見通しを立てると落ち着くようです」
- 「指示は一度にたくさんではなく、一つずつ具体的に伝えると分かりやすいようです」 ご家庭で効果があった関わり方を伝えることで、学校や園でも参考にしてもらえます。
可能であれば、医師から受け取った診断書や、お子さんの特性についてまとめた資料などを共有すると、より正確に情報が伝わります。ただし、これは必須ではありません。まずは口頭や簡単なメモから始めても良いでしょう。
学校・園との連携を深めるためのポイント
一度診断について伝えたら終わりではなく、継続的に連携していくことが大切です。
- 定期的な情報交換: 連絡帳や送迎時、または定期的に面談の機会を設けてもらい、お子さんの家庭や学校・園での様子について情報交換をしましょう。良い変化だけでなく、気になる点も遠慮なく伝え合い、共に考える姿勢が重要です。
- 「個別の教育支援計画」「個別の指導計画」の活用: 小学校などでは、お子さん一人ひとりの教育的ニーズに応じて、「個別の教育支援計画」や「個別の指導計画」が作成されることがあります。これは、お子さんの目標や具体的な支援内容を共有するための大切なツールです。計画作成の際には、積極的に保護者の意見を伝えましょう。
- 困った時に相談できる関係性を築く: 担任の先生だけでなく、特別支援教育コーディネーターやスクールカウンセラーなど、学校・園内の相談できる専門家との関係を築いておくと安心です。
- 感謝の気持ちを伝える: 先生方は日々、様々なお子さんに関わっており、ご家庭との連携にも尽力してくださっています。お子さんの良い変化に気づいたり、きめ細やかな対応をしてもらった際には、感謝の気持ちを伝えることで、より良い協力関係を築くことができます。
すぐに全ての希望が叶わなくても、伝え続けること、対話を重ねることが、お子さんにとってより良い環境を整えることにつながります。
まとめ
お子さんの発達診断について学校や園に伝えるかどうかは、ご家庭の判断です。しかし、情報共有と連携は、お子さんが学校や園で安心して自分らしく過ごし、成長していくための大きな力となります。
伝える際は、診断名そのものよりも、お子さんの具体的な特性や困りごと、得意なことなどを分かりやすく伝えることが大切です。そして、一度伝えた後も、定期的に情報交換を行い、共に悩み、共に考え、お子さんの成長を応援していくパートナーとして、学校や園との関係を築いていってください。
決して一人で抱え込まず、学校や園の専門家の方々とも協力しながら、お子さんにとって最善の道を一緒に探していきましょう。応援しています。